漆の美しさと強さ

漆の美しさのもとは何と言ってもその黒さにあろう。金銀の蒔絵も青紫のアワビや夜光貝の輝きも漆独特の黒さがあって映るのだ。

それらの美しい自然の産物を形取り、並べてひとつの小さな器という宇宙の中に自分の表現したい花や鳥を遊ばせる。それを手にした人が「やっぱり漆っていいね」と言ってくれればこんなに嬉しいことはない。

それに加えて漆の強さ、漆は塗って一週間、一ヶ月、一年、五年、十年とどんどん時間が経つにつれて硬化していきます。しかも酸にもアルカリにも侵されません。ですから味噌汁でも粕汁でもどんなに熱くてもどんな具が入っていてもほとんどが傷もつかずいたむということがありません。下記の扱い方さえ気をつけて頂ければ一生物として使えるのではないかと思います。

笠岡の町外れに、県道の騒音と夏の西日が真正面から当たる小さな雑然たる仕事場。そこで弁柄漆をもう30分も練りながら、蒔絵の下塗りの準備をしている。私の大好きな黒澤明や小津安二郎も、もっともっと沢山なエネルギーや時間をかけていい作品を作って、私の何千倍も何万倍もの楽しみを味わっていたに違いない。

向かいの山の上に広がる夕焼けを見ながらそう思う。

漆器の扱い方について

漆器を使ってみたいが手入れの仕方が分からないから敬遠している人は多いのではないだろうか。
漆器といっても他の器とほとんど同じ扱いで良い。 使った漆器は台所用の中性洗剤をつけてたわし等ではなく柔らかいスポンジで洗いぬるま湯で洗い流し木綿の布巾で拭けば終わりである。 それを食器棚に並べればいい。その時に陶器とは重ねない方が良い。陶器の角などで傷つくおそれがあるからだ。
それ以外は直射日光が当たりさえしなければ他に特に何もすることはない。